ソウルキャッチャーズは吹奏楽マンガです(ジャンプ41号)

SOUL CATCHER(S)のみ

ソウルキャッチャーズが面白い。毎週しっかりと面白い。奇抜な演出だけが売りのネタ漫画じゃない。熟練の実力を感じる。あまりにも面白さが極まってしまったので単独で感想します。途中、なんか知ったふうな口を聞いているのは吹奏楽経験者だからです。ごめん。

一度に多彩なテーマを扱う能力

今週の内容だけ取ってみても、吹越姉妹のドラマを描きながら「勝ち負けだけが音楽なの?」というテーマに切り込み、味覚との共感覚という異能ネタも混ぜ、最後にライバルと遭遇して次回へヒキ。これだけ詰め込んで一話で多くのことを訴えながら、話がわかりにくかったり破綻したりしないというのはホントすごい。多数の話題が同時進行する様はまるで、合奏用のスコア(神峰が一週間かけて書き写してたアレ)でも見ているかのようだ。

間違ってねェ

間違ってない。本当に両者間違ってない。吹奏楽というジャンルの特殊な点として「勝ち負けのために音楽やるのか?」「芸術に点数で優劣つけるのはいかがなものか?」問題は常につきまとうのですが、凡百の主人公なら「音楽で勝敗なんて間違ってる!」とか言い出しそうなところで神峰は冷静に考えてくれた。とても嬉しい。

コンクールで音楽を争うことというのは、オリンピックの体操やフィギュアスケートに似ていて、いずれの競技も芸術的側面はあるけど技術の優劣というのも確実にあって、識者が点数をつけて質の高いほうを勝ち残らせる、というシステムは向上心に繋がるから良いと個人的には思っています。なんだかんだ盛り上がるしね。盛り上がりも大事なモチベだし。

もちろん今回の話はそれに姉妹のドラマが絡むのでまた話が複雑になってくるのですが、このテの話題はそのまま書くとどうしても生臭くなるので、姉妹の人間関係と絡めながら読ませてくれるのは非常にわかりやすい。吹越先輩の言い分も大変もっともだし、そんな事を思える彼女の人格が優しさが原因で妹に嫌われてしまうとは悲しい物語なのだ……。そう普通にドラマが面白い。

ソウルキャッチャーズは奇抜なセンスと演出、異能力などで「吹奏楽漫画というより神海漫画」とずっと言われていましたが、今週の問題提起は完全に吹奏楽ジャンルならではのもので、これはもはや、完全に吹奏楽マンガなのではないか? と思いました。

鳩を……指揮してる?

ここでまた新しい異能力が出てくるのかww この漫画、「他人の心が見える力」「他人の心を掴む力」「共感覚」「鳩を操る能力」が全部違う文脈で出てくるから、何種類も能力の体系があるみたいで面白いなあ。悪魔の実と念と斬魄刀が共存してるようなもんじゃないですか、これ。そうか、世界的指揮者ともなると万物を操れるのか……!

それにしてもパートリーダー攻略中に、さらに伊調くん話を上乗せしてくるとは。このへん神海先生の上手いところで、ただただ漫然とパートリーダーを順に攻略してると読者も退屈なんですよね。だからまだ半分くらいしか味方がいない状態で、並行して天籟ウインドフェスに向けてのストーリーを進行する。過半数の賛成を基準にしたのも納得できる。

しかも、この間にしれっとライバル校を3つ登場させた(天籟、伊調くんのとこ、吹越妹のとこ)。吹奏楽のコンクールはトーナメントではなく、だから一対一の試合をするわけではありません。複数の学校が一度に激突して順位を決めるのです。だったら、複数のライバル校が同時にキャラ立ちしていたほうがワクワクする。4つの学校が「どこが勝ってもおかしくない」状態で一度に激突したら、楽しいと思いませんか?

というわけで、天籟ウインドフェスがひじょうに楽しみですね。まあ、ひとつ言うなれば、神峰先生は木管寄りみたいなのがちょっと寂しいけど……!(木管金管は利害対立で概ね派閥化したりする。どおりで神峰の味方は「暴君」以外木管だったり)